くまーるブログ

あやしうこそものぐるほしけれ。

「古典の世界」に実際に行ってみて感じたこと

 

徒然草』が好きです。

 

 古典の授業に出てくる書物として、一番好きなのが『徒然草』です。

 作者の吉田兼好の目線というか、世の中の見方がおもしろいのです。ちょっと冷めた目で見たり、辛辣な物言いをしてみたり。きっとそういった爽快感が、読む人に好評だったのかな、と思います。

 その『徒然草』の中でも1、2を争うぐらい好きな段が、第五十二段です。


徒然草』第五十二段

 仁和寺(にんなじ)にある法師、年寄るまで、石清水を拝まざりければ、心うく覚えて、ある時思ひ立ちて、たゞひとり、徒歩(かち)よりまうでけり。極樂寺、高良などを拝みて、かばかりと心得て帰りにけり。
 さて、かたへの人にあひて、「年比(としごろ)思ひつること、果たし侍(はべ)りぬ。聞きしにも過ぎて、尊くこそおはしけれ。そも、参りたる人ごとに山へ登りしは、何事かありけん、ゆかしかりしかど、神へ参るこそ本意なれと思ひて、山までは見ず」とぞ言ひける。

 少しのことにも、先達はあらまほしきことなり。

 

 現代語訳は、ここに載っているものがおもしろいです。
 (私は「ハラショー訳」と勝手に呼んでます笑)


 そんな私も「年寄るまで、石清水を拝まざりければ、心うく覚えて」の状態でした。初めて『徒然草』読んでから早何十年。まさに「心うく覚えて」だったのです。そして今回、「ある時思ひ立ちて、たゞひとり、徒歩(かち)よりまうで…」となったのです。

 

 あ、徒歩ではないですな。京都駅からJRと京阪電車に乗って詣でました💦

 

 「極樂寺、高良などを拝みて」とありますが、この随筆を初めて読んだとき、私は勝手に極樂寺と、高良神社は山の中腹にあるものだとばかり思っていました。そして「さらに山に登り続ける人がいるのを仁和寺の法師が見た」と思ったのです。

 ※極樂寺は明治維新時の鳥羽伏見の戦い(1868年)で焼け落ちてしまったそうで、今は跡地だけ残っています。

 

 でも今回実際に訪れてみて、わかったのです。極樂寺跡も、高良神社も、駅から歩いて5分ぐらい、一の鳥居(神社の敷地に入る最初の鳥居のこと)からも1、2分ほどの位置だったのです。
 なので、平面。山のふもとの、平坦な部分にあるのです。山でいうと1合目、と言えばいいのでしょうか。0合目?

 

 そこで、思ったのです。

 このことを(自分で実際に見に行って文章にしたか、人から聞いて文章にしたかは別として)吉田兼好が知って書いているのだとしたら、

 

仁和寺の法師に対して相当な皮肉を言っているな

 と。

 

 極樂寺は荘厳とした作りであったそうなので、それを見て石清水八幡宮だと誤解したにしても、一の鳥居のすぐそばにある神社と寺だけを参拝してあとは何も確かめずに帰ってくるなんて、相当のアホじゃないかと思うんです。

 もしかしたら、滑稽な話にしたいために吉田兼好が誇張したかもしれません。

 

 それでも思うんです。文章中の“仁和寺の法師”に対して、

 

なんであんたはそんなにお間抜けなの。そんな有名な寺社なんだから、それなりに境内とかしっかりしてるでしょ。そんなあっさり参拝が終わるわけないでしょ?

 と。

 

 ただ、現代を舞台にしたとしても、この“仁和寺の法師”さんは、ケーブルカーの乗り場に気づかなかったかな、と思うのです(笑)

 乗り場は、一の鳥居及び極樂寺、高良神社と反対側にあるからなのです。なので乗り場に気づかず、「極樂寺、高良などを拝みて、かばかりと心得て帰りにけり」だった可能性も高いな~と思うのです。


 仮にケーブルカーの乗り場に気づいたとしても、「あれは石清水八幡宮に行くものではない。(生駒山みたいに)山頂にレジャーランドがあってそのためのものなんだ。だから私には関係ない」とか思ってしまうんじゃないかな~と勝手に推察に走ります(笑)

 ここまで文章を書いていて、「こういう現象って、なんか名前がついていなかったかな?」と思って思い出してみたところ、出てきました。

 

 認知バイアスだ」

 と。

 

 ※認知バイアスとは、物事の判断が、直感やこれまでの経験にもとづく先入観によって非合理的になる心理現象のことである。(by wikipedia

 

 ということで、下調べはしたほうがいいし、わからなかったり疑問に思ったりしたら人に聞くのがいいんだな、と思った次第です。

 

【ここから全然関係ないこと】

 石清水八幡宮は「八幡神(やはたのかみ)」という神様を祭っているそうですが、その使いとされるのが「鳩(ハト)」なのだそうです。

 石清水八幡宮の鳥居の額にある「石清水八幡宮」の「八」の部分はハトが二羽向かい合っているようにも見えます。

 そういうことから、ハトはゆかりのある動物なのだそうです。

 

 京阪電車の特急のマークがハトをイメージしているのも、石清水八幡宮のハトが由来なのだとか。


 「なるほど」と思いました。

 さらに、「八幡宮」の「八」の部分がハトの二羽向かい合わせになっているのは、鎌倉の鶴岡八幡宮もそうなのだとか。

 「ああ、だから“鳩サブレ―”なのね」

 今までそんなこと知らずに黄色い缶箱買ってました(笑)

 

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。