くまーるブログ

あやしうこそものぐるほしけれ。

どう生きるか

今日(230901)、『君たちはどう生きるか』を見てきました。

公開から2カ月も経とうとしているという、ちょっと遅い時期でしたが…💦

ウワサには聞いていましたが、難解な映画でした。
でも伏線の回収もできていて、「意味が分からなくて困る」という訳でもありませんでした。

印象的だったのは、映画が終わって、出口までの通路、そして出口での道で、ずっと私の後ろにいた若い男の子(大学生ぐらい?)の2人組が「あれって、こういうことだよね?」「あのシーンのあれは、…につながるんだよね?」みたいにお互いの考えを述べあっていたことでした。

昨今、「わかりやすさ」が求められている気がします。映画作品もしかり。わかりやすいものが多くなってしまいました。
でも、たまにはこういう「わかりにくいもの」も見ておいたほうがいいと思うんです。
答えなんか出なくてもいいんですよ。
自分の中で「こういうことなんだよな」と思えれば。
しかもそれを友だちと2人で語れるなんて幸せじゃないか。

考えること、大事です。

そんな風に思いました。

もちろん、「生きる」っていうことを考える映画であったと思いました。
それは前作の『風立ちぬ』のキャッチコピーである「生きねば」にもつながるな、と思いました。

あと、過去の作品で言うと『となりのトトロ』を思わせる映画でもあるな、と思いました。
トトロでは暗いトンネルを抜けた世界はファンタジーのような世界になっていましたが、本当は今回の映画での「あっちの世界」みたいなものではないのかな、と思いました。なんというか、死と隣り合わせの世界というか…。

あとは7人のおばあさんの中に湯婆婆みたいな顔の人もいましたね。他にも今までの宮崎駿作品を思わせるシーンがいくつもありました。そういう意味では今までの集大成であったのかも。

ただ違うのは、今までのようなジブリのエンタメ映画ではなく宮崎駿が全での魂を込めて作った宮崎駿の精神世界が描かれてる映画ではないか、ということです。
一度引退したけど、いろいろ思っていたことを「本当の最後の作品」として注入しておきたかったんじゃないかと思います。

そしてそれが入っているのがあの映画なんだと思います。もちろんあふれ出てしまった部分もあるのかもしれませんが。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

交差点で見かけた南アジアの人たち


前回投稿から1週間空いてしまいましたが、

韓国旅行編、第3弾です。

 

韓国滞在中にソウルから釜山へ行きました。

 

しかし、折から接近中の台風6号の影響で、釜山は
も時折強く吹いていたので、まともに観光ができませんでした。

南浦洞などの繁華街に行ってみましたが、人はほとんどいなく、閑散としていました。

 

「どうしようかな」と思ったとき、釜山港の国際旅客ターミナルが新しくなったのを思い出し、そこに行ってみることにしました。

シャトルバス等があるみたいですが、おそらく台風の影響で国際船は欠航でバスは出ていないだろうと思ったので、雨の中トコトコ歩いて国際旅客ターミナルを目指しました。

 

すると、交差点で自転車に乗っていて信号待ちをしている人が大勢…。
韓国では自転車に乗る人は少ないので、これだけ多くの自転車に乗っている人を見るのは初めてでした。

そして仕事柄なのでしょうか、この距離でどこの国の人かが予想できます。

おそらくネパールか、スリランカバングラデシュか…。
その辺りの南アジア出身の人だと思いました。

信号が青になって彼らとすれ違いましたが、しゃべり声からおそらくネパールだろうと思いました。

 

南アジア系の人を初めて韓国で見たのは、
8年前に韓国に行ったときだったかな。

養成講座の元受講生に会うために、世宗特別自治市という、当時新しくできた街に行ったのですが、そのときに見ました。
新しい街なので、あちこちで道路工事をしていました。
その工事現場で働いていたのが南アジア系の人でした。

 

ご存じの方もいらっしゃると思いますが、韓国でも少子化等の関係で、労働力が不足しており、それを外国人に頼っている面があります。

韓国には、「雇用許可制(고용허가제/Employment Permit System;EPS)」というものがあります。

 

韓国における雇用許可制とは?

《韓国の雇用許可制度》働き手を送り出す国と韓国政府が協定を結んだ上で、期間を区切って外国人労働者を受け入れる枠組み。 送り出し国は、韓国で働きたいと希望して韓国語の試験に合格した人のリストを韓国に送る。 韓国政府は、国内の雇用情勢を踏まえて、受け入れ業種と人数枠を国別に設定。

朝日新聞デジタル(2021/03/21)より引用。


韓国の雇用許可制は、よく、日本の技能実習制度や特定技能と比較されます。

細かい比較をするのは置いておくとして、この制度によって非専門職人材の外国人が韓国で働いています。

 

この制度によって韓国で働いている人にはどのような韓国語力が必要とされているのか、気になりました。とある論文によると、以下のように書かれています。

 

EPS で韓国に入国し労働するには、2つの過程を経なければならない。1つ目は、EPS-TOPIK(Employment Permit System-Test of Proficiency in Korean)を受験し合格することである。

〔吹原豊,松﨑真日,助川泰彦(2016)「韓国の雇用許可制語学試験(EPS-TOPIK)からみた就業前の言語習得について」『福岡女子大学国際文理学部紀要 (5)』pp.121-140 より引用〕

リンク:https://fwu.repo.nii.ac.jp/record/3055/files/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E7%A0%94%E7%A9%B605_p121_140_[PDF].pdf

 

上記論文にEPS-TOPIKの概要が書かれていますが、以下の論文でも概要が分かります。

 

松崎真日,吹原豊,磯野英治,助川泰彦(2022)「移住労働者の現地言語能力についての考察-雇用許可制韓国語能力試験の模擬試験結果から-」『日本語研究』40,pp.111-125

https://tokyo-metro-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=8966&item_no=1&attribute_id=18&file_no=1

 

雇用許可制語学試験(EPS-TOPIK)がどんな試験なのかは上記論文から知ることができるので、興味のある方はお読みください。

 

そして、「雇用許可制語学試験(EPS-TOPIK)に合格」がどのレベルにあたるのかと言うと、CEFRのA2に相当するということです。以下の論文に書いてありました。

 

熊野七絵・戸田淑子・安達祥子(2021)「「国際交流基金日本語基礎テスト」の開発-生活場面でのコミュニケーションに必要な言語能力(A2レベル)を判定するCBT-」『国際交流基金日本語教育紀要』第17号

https://www.jpf.go.jp/jft-basic/report/pdf/kiyou17_kumano.pdf

 

そして、雇用許可制語学試験(EPS-TOPIK)は韓国入国前に合格する必要があるため、そのためには母国で韓国語を勉強する必要があります。吹原,松﨑,助川(2016)「韓国の雇用許可制語学試験(EPS-TOPIK)からみた就業前の言語習得について」によると、

 

ところで、EPS 希望者はEPS-TOPIK で基準得点を満たすことがまず重要であるため、受験前に韓国語の学習をおこなうことになる。多くの場合、私設の語学学校に通う、家庭教師から韓国語を学ぶ、独学をするなどである。基本的にEPS-TOPIK の受験者は各自で対策を立て韓国語を学習する。雇用許可制で働くインドネシア人労働者を対象とした聞き取りでは、EPS-TOPIKの対策として語学学校で勉強した者、独学した者がいた。語学学校で勉強した経験のある労働者の話によればEPS-TOPIK に特化した韓国語授業をおこなう語学学校があるとのことであった。

 

と書かれており、渡韓前に勉強するらしいです。

 

ちなみにEPS-TOPIKためのテキストは以下にあります。

https://epstopik.hrdkorea.or.kr/epstopik/book/self/ebookIndex.do?lang=en

 

あと、非公式だと思うのですがEPS-TOPIKための音源や解説動画がYouTubeに上がっています。

 

以下のリンクは、聴解問題の対策動画の1つです。

 

 

と、ここまではネットで検索できるのですが・・・

 

①韓国に来てからは受け入れ施設的なところはあるのか
②EPSで来た外国人はどういうところで暮らしているのか(寮みたいなところ?)
③韓国で働き始めてからの韓国語学習/韓国語教育はどうしているのか

 

がわかりません。

 

特に、個人的には③が気になります日本語能力試験(JLPT)にあたるものに、韓国語能力試験(TOPIK)がありますが(下記に注)、EPS-TOPIK合格者であるEPS労働者に対して、雇用主がTOPIKの3級以上を受けさせているのかとかが気になります。また受ける際の勉強の支援をどうしているのかとかも知りたいです。

 

【注】
TOPIKは1級が初級に相当し、6級が一番上の級。
詳しくは以下のHP参照。

 

 

私が運営に関わっている「一般社団法人 日本語フロンティア」は、事業の一つに「配属後の技能実習生や、特定技能で働く外国人の日本語教育」があります。配属後の技能実習生や、特定技能で働く外国人の日本語教育については手探りの部分が多いです。今のところJLPT対策をするか、教科書を使って教えるにしても、一部の教科書(『ゲンバの日本語』や『人とつながる 介護の日本語』など)に頼らざるを得ません。正直、どんな日本語を教えればいいのか、戸惑っています💦

 

なので次に韓国に行くときは、EPSで来た外国人を受け入れている韓国企業を訪れたり、EPSで韓国に来た外国人に会ってみたりしたいな、と思います。

 

でも全然ツテはありません。もしこれを読んでくださった方で、何か情報をくださったり、紹介してくださったりする方がいらっしゃいましたら、ご連絡をいただけますと幸いです

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

英語が韓国語に勝ってしまった瞬間


今回の韓国行きは、本当に勢いだけでチケットを予約したものあり、「どこで何をしようか」ということを特に考えていませんでした。

しかも台風の接近が予想されていて、「きっと思ったような旅はできないだろうな」と旅の初めから思っていました。

 

そこで今回の旅の目的は、「どれだけ韓国語がダメになったかを確認すること」にしました。


極力、色んな人と韓国語で話をしてみて、わかること、わからないことを確認してみました。


聞き取りダメになっていました。
もともと英語でも何でも、聞き取りが苦手です。

 

なんていうか、人によって聞き取りやすさが変わるんです。
わかりやすく言うのなら、「アメリカ英語は聞き取れないけど、イギリス英語なら聞き取れる」みたいな。

中国語も大連など東北部の中国語なら雰囲気的に聞きやすいのですが(聞き取れると言っていないことに注意)、そのほかの地方のだと、もう何を言っているのやら、っていう感じです。

韓国語では、個人的には大田をはじめとする忠清道の言葉が聞き取りやすいです。

 

あと、聞き取りというのは場面によってはそんなにきちんと聞けなくてもなんとかわかります。
だいたい聞かれることがいっしょだからです。例えばお店(コンビニや飲食店含む)の場合、以下のような感じでしょうか。

●袋が必要がどうか
●ポイントカードの有無
●持ち帰るかどうか(ファストフードなどの場合)

あとたまに、決済方法を聞かれることがあるかな。

 

今回の韓国旅行で、本を買ったときのことでした。

「袋が必要がどうか」「ポイントカードの有無」についてはクリアしました。

でも、その次の言葉が何を言っているのかわかりませんでした

聞き返してみましたが、その説明もわからず

2回聞き返しても、わからず

 

店員さん、英語に切り替えて話し始めました・・・。

 

「駐車券を持っているか」そして「車で来たのか」ということだったのです。
(「車で来たのか」のときは両手でハンドル握るジェスチャー付き)

あああ、そういうことだったのか。
「確かにこの書店、地下に駐車場があったな~」ということを思い出しました。

英語が韓国語に勝ってしまった瞬間でした・・・

 

私の中では外国語ランキングは

 

韓国語 > 英語

 

だったのですが、それが今回に限っては英語が勝ってしまったのです。

大袈裟ですが、屈辱的でした。

 

「駐車券を持っているか」「車で来たのか」ぐらいの韓国語ならわかるはずなのに、その店員さんが言っていることが本当にわかりませんでした。できることなら、その店員さんが言ったこともう一度聞きたいです。録音したいぐらいです。

「買い物の表現だけでも完璧にしたいな」という気持ちになりました。

 

韓国語の勉強しよう。

しなくちゃ。

공부 해야지.

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

「ある」と「ない」

 

5月に香港に行ったのですが、コロナ期間にずっと抑えていた海外旅行熱が吹き出ししまいまして・・・。
帰国後、勢いで韓国行きのチケットを取ってしまいました(笑)

 

そして8月になり、韓国に。
韓国では特に予定を決めずに過ごすことにしました。
出発日が近づくにつれ、台風が韓国を縦断する予報になったのもあり、「もう、その日の気分で決めちゃおう」といういい加減な旅行です(笑)

↑出発日の予報。実際に、こんな感じで縦断していきました💦

 

実際どんな旅行だったかはひとまず置いておくとして・・・。

今回の韓国旅行で感じたことを数回に分けて書いてみようと思います。

 

旅行での頻度が高いことの一つは、買い物だと思います。

店員さんと何らかのやり取りをしなければなりません。
近年だと袋が有料の国が多いので「袋要りますか?」みたいなことは必ず聞かれます。

 

今回とあるコンビニで出会った店員さんは

「봉투 필요하세요?(袋要りますか)」という韓国語を言いながら両手でビニール袋の形を空中で描くジェスチャーをしてくれました。

 

こういうさりげない行動が、言葉が分からない場合は助かります。

さて、支払いも無事済ませてお店を去るとき・・・。

日本の場合は、店員さんが

「ありがとうございました」

とか

「またお越しくださいませ」

と言いますが、お客さんのほうは何も言わないですよね。

 

でも韓国の場合、お客さんのほうも何か言うことが多いです。

例えば、店員さんが店を去ろうとするお客さんに

 

「감사합니다(カムサハムニダ =ありがとうございます)」

 

とか

 

「안녕히 가세요(アンニョンヒ ガセヨ =さようなら) 」(※注1)

 

ということが多いです。

 

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【注1】

韓国語の「さようなら」は立場によって2種類あります。

「안녕히 계세요(アンニョンヒ ゲセヨ =さようなら)」はその場に残る人が、去る人に対して使います。

去る人が残る人に言うのは「안녕히 가세요(アンニョンヒ ガセヨ)」です。

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そのように言われて、無言で店を去っていくのもアリなのですが、韓国人の中には

 

「안녕히 계세요(アンニョンヒ ゲセヨ =さようなら)」

 

とか

 

「수고하세요 (スゴハセヨ ※注2)」

 

と言って去っていく人が結構います。

 

========

【注2】

「수고하세요 (スゴハセヨ)」は本来「お疲れ様です」にあたる韓国語なのですが、この場面では「(お仕事)がんばってください」みたいなねぎらいというか応援の気持ちというかなんというかそういった感情を表す言葉であります。

========

国語学習では、いつも「言葉がある」ものばかりが目に行きがちです。
一対一の関係になっているものというか、対応があるものというか、そういったものを中心に学んでいる気がします。

でも、外国語の中には、自分の言語の中には「言葉がない」もしくは「そういう言動がない」というものもあります。

日本では、お客としての自分が店を去るときに店員さんにかける言葉が「ない」のです。

「さようなら」だと変だし「お疲れ様です」も変。
「ありがとう(ございます)」とこちらからも言うのがギリギリ合格(?)でしょうか。

 

自分の経験上、韓国以外の国でもお客としての自分が店を去るときに店員さんにかける言葉は「ある」と思うのですが、日本だと「ない」のです。

 

国語学習って、こういった「ある」「ない」に目を向けるのも大事だな、と思っています。

 

逆に、他の言語には「ない」んだけど、日本語に「ある」と思われるのが、人に体の一部が触れた当たったぶつかったときの「すみません」かな。

韓国では人混みでちょっと当たったぐらいでは何も言わないような気がします。というか、そういうときの表現が思いつきません。もちろん「미안합니다(ミアナムニダ)」「죄송합니다(チェソンハムニダ) 」などがあるのですが、なんか重たい感じがします。自分が明らかに悪いときなら使ってもいいのではないかと思いますが…。

 

ビジネス的なもので言えば、「いつも大変お世話になっております」でしょうか。これも日本語に「ある」ものですね。韓国語も含め、他の言語だと「こんにちは」で済んでしまいます。

 


話を無理やり日本語教育のほうに持っていきます。

 

日本語を学習するとき、上記のような「ある」に関しては注目されることが多く、多くの教師の方が授業のどこかで触れると思いますが、さらに前に書いたような「ない」に関しては、あまり注目されないと思います。「こういうときにはどう言う?」だけじゃなくて「こういうときには言わない」というのにも注目する必要があるかな、と思いました。

 

そこで私への宿題です。

「こういうときには言わない」という場面は、日本語では他にどんな場面があるのか探してみようと思います。
このブログを書いている時点では「お客としての自分が店を去るときに店員さんにかける言葉」以外に見つかりません…💦

 

読者の方で「こういう場面は?」というのがありましたら、X(Twitter)にてご指摘をいただけますと幸いです🙇

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

「古典の世界」に実際に行ってみて感じたこと

 

徒然草』が好きです。

 

 古典の授業に出てくる書物として、一番好きなのが『徒然草』です。

 作者の吉田兼好の目線というか、世の中の見方がおもしろいのです。ちょっと冷めた目で見たり、辛辣な物言いをしてみたり。きっとそういった爽快感が、読む人に好評だったのかな、と思います。

 その『徒然草』の中でも1、2を争うぐらい好きな段が、第五十二段です。


徒然草』第五十二段

 仁和寺(にんなじ)にある法師、年寄るまで、石清水を拝まざりければ、心うく覚えて、ある時思ひ立ちて、たゞひとり、徒歩(かち)よりまうでけり。極樂寺、高良などを拝みて、かばかりと心得て帰りにけり。
 さて、かたへの人にあひて、「年比(としごろ)思ひつること、果たし侍(はべ)りぬ。聞きしにも過ぎて、尊くこそおはしけれ。そも、参りたる人ごとに山へ登りしは、何事かありけん、ゆかしかりしかど、神へ参るこそ本意なれと思ひて、山までは見ず」とぞ言ひける。

 少しのことにも、先達はあらまほしきことなり。

 

 現代語訳は、ここに載っているものがおもしろいです。
 (私は「ハラショー訳」と勝手に呼んでます笑)


 そんな私も「年寄るまで、石清水を拝まざりければ、心うく覚えて」の状態でした。初めて『徒然草』読んでから早何十年。まさに「心うく覚えて」だったのです。そして今回、「ある時思ひ立ちて、たゞひとり、徒歩(かち)よりまうで…」となったのです。

 

 あ、徒歩ではないですな。京都駅からJRと京阪電車に乗って詣でました💦

 

 「極樂寺、高良などを拝みて」とありますが、この随筆を初めて読んだとき、私は勝手に極樂寺と、高良神社は山の中腹にあるものだとばかり思っていました。そして「さらに山に登り続ける人がいるのを仁和寺の法師が見た」と思ったのです。

 ※極樂寺は明治維新時の鳥羽伏見の戦い(1868年)で焼け落ちてしまったそうで、今は跡地だけ残っています。

 

 でも今回実際に訪れてみて、わかったのです。極樂寺跡も、高良神社も、駅から歩いて5分ぐらい、一の鳥居(神社の敷地に入る最初の鳥居のこと)からも1、2分ほどの位置だったのです。
 なので、平面。山のふもとの、平坦な部分にあるのです。山でいうと1合目、と言えばいいのでしょうか。0合目?

 

 そこで、思ったのです。

 このことを(自分で実際に見に行って文章にしたか、人から聞いて文章にしたかは別として)吉田兼好が知って書いているのだとしたら、

 

仁和寺の法師に対して相当な皮肉を言っているな

 と。

 

 極樂寺は荘厳とした作りであったそうなので、それを見て石清水八幡宮だと誤解したにしても、一の鳥居のすぐそばにある神社と寺だけを参拝してあとは何も確かめずに帰ってくるなんて、相当のアホじゃないかと思うんです。

 もしかしたら、滑稽な話にしたいために吉田兼好が誇張したかもしれません。

 

 それでも思うんです。文章中の“仁和寺の法師”に対して、

 

なんであんたはそんなにお間抜けなの。そんな有名な寺社なんだから、それなりに境内とかしっかりしてるでしょ。そんなあっさり参拝が終わるわけないでしょ?

 と。

 

 ただ、現代を舞台にしたとしても、この“仁和寺の法師”さんは、ケーブルカーの乗り場に気づかなかったかな、と思うのです(笑)

 乗り場は、一の鳥居及び極樂寺、高良神社と反対側にあるからなのです。なので乗り場に気づかず、「極樂寺、高良などを拝みて、かばかりと心得て帰りにけり」だった可能性も高いな~と思うのです。


 仮にケーブルカーの乗り場に気づいたとしても、「あれは石清水八幡宮に行くものではない。(生駒山みたいに)山頂にレジャーランドがあってそのためのものなんだ。だから私には関係ない」とか思ってしまうんじゃないかな~と勝手に推察に走ります(笑)

 ここまで文章を書いていて、「こういう現象って、なんか名前がついていなかったかな?」と思って思い出してみたところ、出てきました。

 

 認知バイアスだ」

 と。

 

 ※認知バイアスとは、物事の判断が、直感やこれまでの経験にもとづく先入観によって非合理的になる心理現象のことである。(by wikipedia

 

 ということで、下調べはしたほうがいいし、わからなかったり疑問に思ったりしたら人に聞くのがいいんだな、と思った次第です。

 

【ここから全然関係ないこと】

 石清水八幡宮は「八幡神(やはたのかみ)」という神様を祭っているそうですが、その使いとされるのが「鳩(ハト)」なのだそうです。

 石清水八幡宮の鳥居の額にある「石清水八幡宮」の「八」の部分はハトが二羽向かい合っているようにも見えます。

 そういうことから、ハトはゆかりのある動物なのだそうです。

 

 京阪電車の特急のマークがハトをイメージしているのも、石清水八幡宮のハトが由来なのだとか。


 「なるほど」と思いました。

 さらに、「八幡宮」の「八」の部分がハトの二羽向かい合わせになっているのは、鎌倉の鶴岡八幡宮もそうなのだとか。

 「ああ、だから“鳩サブレ―”なのね」

 今までそんなこと知らずに黄色い缶箱買ってました(笑)

 

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

デジタル協業

 

 先日(6月15日)、『日本語能力試験(JLPT)対策 介護のN3』という書籍が出版されました。

 


 この本では私は、本の企画と、製作のお手伝いをいたしました。

 今回は、企画と製作についてちょっと書き記しておこうと思います。

 

 今からさかのぼること3年前。
 ちょうど新型コロナウィルス感染症の流行が始まり、ロックダウンとか行動制限とかいろいろなされている頃でした。

 外国人の来日もストップし、私の仕事も大幅に減りました。
そのため自分で考える時間が生まれ、その時間の中で「外国人介護人材向けの問題集が作れたらいいな」ということを思いました。

 

 「外国人の来日もストップし…」と書きましたが、実は介護人材の来日だけはストップしていませんでした。EPA介護福祉士候補生は入国していたのです。それだけ重要性が高いものだからだろうな、と私は思っていました。

 EPA介護福祉士候補生に限らず、介護の現場では多くの人材を必要としています。その中でも外国人の必要性も高いです。そのような中で言葉の問題はクリアしなければ問題の1つだと思っていました。

 そこで、企画書を作りました。
 だいたい、書籍を出版社に出してほしいとお願いするときは「企画書」というものを作って出版社に見せる、ということをします。

◆これは「企画書」の前の段階の「構想」をまとめたもの。


 幸い、企画書を読んで、出版にOKしてくださる出版社がありました。
でも、コロナの影は深刻で、さまざまな業界にダメージを与えていました。
 出版業界とて例外ではありませんでした。
 よって、出版においてもスケジュール通りにはいかないだろうな、という予想のもと、製作を開始しました。


 練習するための問題自身はある程度作っていたのですが、問題の精度を上げる必要があります。作り手にとってはいい問題でも、解くときに何か障害が発生する可能性もあります。また、実際に日本語教育、または外国人介護人材の支援をしている方々、はたまた介護業界に身を置いている方々にも、この問題を客観的な目で見てもらう必要があると思いました。

 そこで、SNSを使って声をかけてみたのです。

 

◆上記画像はTwitterでの呼びかけ例です。ほかにFacebookでも呼びかけてみました。


 15人ぐらいの方に反応をいただき、Chatwork(Slackみたいなチャットツール)を使って協同作業を行うことにしました。

 メンバーの中には、私と顔なじみの方もいれば、会合等で顔見知りの方もいました。そして、ネットの中だけで仲良くしていて、直接はお目にかかっていない方もいました。住んでいる場所も日本全国バラバラで、海外にお住まいの方もいました。

 でもありがたい時代です。Chatworkを使って、問題の精度を上げるための試用の報告をしたり、問題の選択肢のチェックをしたり、時には意見交換もしたりと、直接顔を合わさなくても作業を進めることができました。

 

 文字による部分だけでなく、イラストについても、ネットでのつながりに助けてもらいました。たまたまネットでつながっていた方に「私、イラスト描いてまして…」とイラストを見せていただきまして、「是非に!」となった次第です。

 

 なので、製作の大部分を「デジタル協業」という形で行いました。それから、ちょっと時間はかかりましたが、構想から約3年を経た6月に、『介護のN3』が出版されたのです。

 実は、この「デジタル協業」というのはわたしの夢の1つでもありました。日にちを決めて大勢が集まって打ち合わせ・会議を行う、ということに疑問を持つことも多かったです。ちょっとしたことでもいちいち集まり、しかも大部分が無駄話になってしまうこともしばしば。そんな打ち合わせ・会議に嫌気がさしていたのです。もちろん、対面で打ち合わせ・会議を行うことには意義があるのでしょうが、その前に効率を重視したかったのです。
 それと「対面で打ち合わせ・会議を行うことには意義がある」という中には「対面で行うことで絆や連帯感が生まれる」という考えもあるでしょうが、それならば最初からなんらかのつながりがある人に集まってもらえたらそれでいいのではないか、と思ったのです。

 幸い、声かけに応じてくださった方々は、私にとって全くの「初めまして」の方ではなく、ネット上のどこかでお目にかかったばかりでした。
 やっぱり「あなた誰?」っていう人だと仕事はやりにくいな、と思います。例えばTwitterの場合だとフォロー/フォロワーの関係のどちらでもない人からいきなりリプライされることがあるのですが、私にとってはドギマギしてしまうものなのです。

 今後も、「デジタル協業」を実施していきたいと思います。本の製作だけでなく、教材づくりや、勉強会の開催など、さまざまな協業をしていけたらな、と思います。

 ということで、こんなワタクシではありますが、仲良くしていただける方、随時募集中です。ワタクシ、TwitterでもFacebookでも大したことは投稿していませんが、絡んでやっていただけますと幸いです。そしてこれから一緒に楽しくお仕事をするときのパートナーに、またはメンバーになっていただけますと幸いです。
 
 どうぞ、よろしくお願いいたします。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

香港所感

 

24年ぶりに香港に行ってきました。

新型コロナウィルス感染症の流行も落ち着きを取り戻し、流行前のときと同じ状況(検査や隔離がない状態)で自由に行き来ができるようになりました。その波に私も乗っかる形で、行ってきました。

コロナ前から、海外への渡航は変化が見られました。
例えば、出入国のスタンプの廃止、出入国審査の自動化等です。
それは以前の記憶があったので問題はなかったのですが、私が今回驚いたのは「自動チェックイン機」なるものでした。
航空会社のカウンターでチェックインをするものだと思っていたのですが、今は機械でチェックイン。荷物を預ける必要がある人だけ、カウンターに行くというものでした。

海外へ行く飛行機、しかも3時間半というある程度の時間があるフライト。
となれば楽しみなのは機内食

「久しぶりだなぁ」と、感慨深いものがありました。

 

そして、香港に無事に入境。やっぱりパスポートにスタンプは押されません。
記念でもいいから押してほしいな~と思うのであります。

「じきにパスポートはカードになってしまうだろうな」と思いました。

私は海外にはSIMフリーのポケットWi-Fiを持っていくのですが、これも稼働させるのはコロナ前に海外に行った4年前以来。
お店でSIMを買って挿してもらって、使えることが分かるまではドキドキでした。
ちなみにSIMは12GBで88HKD(1580円)。結局最終日まで3GBぐらいしか使わなかったので、半分のギガで半額のものがあるといいな、と思いました。

そして空港から市内に向かう鉄道に乗車。
運賃、105HKD(1885円)…。
20分ちょいで市内に行ける快適な列車とはいえ、高いな…。

 

この「高いな…」は結局最終日まで付きまといました。

とにかく、高いのです。
コンビニの水(500mL)が10HKD(約180円)。


日本だとコンビニの水は110円か120円ぐらいだと思うので、割高感がするのです。

飲食をするたびに感じました。
クレジットカードも使ったものの、
両替をした現金がサササササーッと消えていくのはちょっとコワかったです。

そして、今月のクレジットカードの請求がコワいです…😅

 

でも、食べ物はどれも美味しかったです。
地元の方にいろいろなお店に連れて行っていただきました。

飲茶にも行けました。

おいしいものを食べていると調子に乗って食べすぎてしまい、お腹を壊すこともあるのですが、今回は理性というか自制がきいたのか、お腹が痛くなることなく毎日を過ごせました。

飲食店等でビックリしたのが、普通話(北京語)が聞こえてくること。
注文のとき普通に店員さんに普通話(北京語)で話しかける人がいたことです。
そして普通に店員さんが普通話で答える。
コードスイッチングがすごいんです。

なんかシンガポールみたいだなあ、と思いました。

 

ディズニーランドのジャングルクルーズは3言語対応のようです。
(私が行ったときは英語と北京語のみでしたが…)
どうやら言語で船がわかれていたようで、これは日本のジャングルクルーズも真似をしてもいいのでは、と思いました。
ジャングルクルーズは船頭さん(?)の話術を楽しむものだと思うので…。

 

普通話(北京語)と言えば、話の中で何かと中国のことが話題になるのも印象的でした。
ニュースでも中国のことが取り上げられるし、北京では今どうこうとか、上海では何が起きたかとか、中国の就職率とか、宇宙開発とかの話題が普通に生活の中に溶け込んでいるのを見て「一国二制度の“中国”なんだな」と思いました。

レジ袋が有料で、最初に聞かれるのが「袋要りますか?」だというのは日本と同じだと思った。
でも、広東語はわからないので、「bù yòng」か「No bag, please.」と返してました。
そう考えると、「袋要りますか?」は日本語の初級でも必要な表現かも。

試しにレジ袋もらってみようと思って「Yes, please」で返したところ…。
1枚1HKD(約18円)でした。
これは「たっか~!」とは思いませんでした。
「3円とか5円とか言わず、日本ももっと高い値段にすればいいのに」と思いました。

 

クレジットカードを結構使いました。
クレジットカードで支払うというとほとんどのレジで「タッチして」と言われました。
私のカード、タッチのタイプじゃないんですよね…💦

なので、その都度「Insert, please」という謎の英語(「これ、挿入するタイプなんです」と言いたいが英語でどう言ったらいいかわからないため)で対応していました。
こないだクレジットカードは更新したばかりだけど、タッチタイプのやつ、1個持っておいたほうがいいかな。
日本もいずれタッチのほうが主流になるだろうし…。


そして、交通、とくにMTRが複雑になっていてビックリしました。
私が昔来たときは、赤と青と緑しかなかったんですが…。


なんか東京みたいにぐちゃぐちゃになってました。

ま、大都市だからこうなりますよね…💦

昔ながらの乗り物と言えば、スターフェリーがありますが、今でも健在でした。
でも、昔と比べてお客さんは少なく赤字で、「いつかなくなるかもしれない」なんていうことも聞きました。
次に香港に来たときになくなっていては寂しいので、乗っておくことにしました。
しかも、下。
スタフェリーは、下のほうが好きな私です。

そして昔ながらの乗り物と言えば、トラムに乗りました。
あいにく伝説の120番には乗れませんでしたが、2階建ての最前列に乗って、流れゆく街並みを楽しむことができました。
でも、途中で運行が打ち切られちゃって、全然動かなくなって、しょうがないので降りようとしたら「お代は要らない」みたいなことを言われたんです。なので、タダで乗ってしまいました…💦

 

24年ぶりの香港。
いろいろなものが変わっていました。
「なつかしい」と感じるより「うわあ、すごいな」という感覚ばかりでした。

ちなみに、香港の人(ただし日本語が話せる)の人に「香港はじめてですか?」と聞かれ「いいえ、3回目です。でも24年ぶりです」というと大抵の人が驚いていました。

間、あきすぎですよね。

そんな香港滞在も、とうとう最終日が来ました。
名残惜しいのですが、「今度は24年も間をあけるのはやめよう」と誓った次第です(笑)

市内から空港へは、節約も兼ねてバスで行きました。
33HKD(586円)。
空港までの列車の3分の1です。
時間は逆に3倍ぐらいかかりますが、時間はあるので気にしませんでした。

 

そして空港に着いて手続き等をして出境、そして飛行機に乗り、一路羽田へ。

実は帰りの便は羽田経由だったんです。

夜遅くに羽田に着く便だったので、羽田空港内の宿所にて一泊。
翌朝、国内線で名古屋に向かいました。

チェックイン機は、国内線もでした。
なんなら羽田空港の国内線は、荷物預けるのも機械になっていました。

「何でも機械化! 人がいなくなる!」

とはなっていませんでした。結局操作がわからずに説明を求める人が多数。
私もその一人でしたが…😅
多くの係員がつきっきりで対応していました。
だったらもともとの有人カウンターでいいじゃないかと思うけど…

 

あ、順番が前後しますが、この4年海外行ってない間に変わってたことがもう1つありました。
税関の申告です。

予め「Visit Japan Web」に登録して、申告内容に関する質問に答えておいて、QRコードを呼びだしてそしてパスポートと一緒にこの機械に読み込ませて顔写真、という流れ。
それはそれは、戸惑いました😅

その手続きをしておけば、あとは「電子申告ゲート」というところに向かって進めば何事もなくスルーできるという仕組みでした。
私のように久しぶりに海外行かれる方は、私と同じように遠慮なく戸惑っていただければと…😅

 

「久しぶりに海外」という方も多いと思います。
このコロナの間で海外に行くときの自分の行動の感覚・記憶がなくなっている方も多いと思います。
おまけにシステムがいろいろ変わっています。

戸惑うこともあると思いますが、それも楽しみながら海外旅行を楽しんでいただけたらと思います。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。