日本語教師養成講座の講師もしています。
今日は、養成講座の模擬授業のことについてお話しいたします。
模擬授業、特に、外国人の学習者役の人に来ていただいて行う模擬授業を受け持つことがあります。
私はそのとき、模擬授業を行う受講生さんに対して、厳しいコメント、細かいコメントをあまりしないようにしています。
細かく言ってもやる気をなくすだけではないか、と思うからです。
一度に直すことができるのは、3~4カ所だと思うのです。
だから、指摘するのも3~4カ所でいいのかな、と思います。
あと指摘の仕方も、できるだけ否定的にしないようにしています。
ある日、廊下を歩いていた時のことですが、ふと教室を覗くと(ガラス張りで、ドアが開いているので声が聞こえる)、別の先生が模擬授業のコメントをしているところを見かけました。
「『今、買っています』という表現を使いましたが、そのような表現はありません。別の表現にしてください。」
確かに、現在進行形としての「買っています」は使う機会は少ないかもしれないけど、それを「そのような表現はありません」なんてきっぱりと指摘してしまっていいのかな、って思いました。
コメントする先生は椅子に座っていて、模擬授業を終えたばかりの受講生さんはホワイトボードの前に立たされてうつむいています。
まるで裁判をしているかのよう。
私だったら、コメントするときは受講生さんにも近くの席に座ってもらうのになぁ。
あと、こんなきっぱりとは言いません。もしコメントするのなら、
「『今、買っています』というのは初級の段階ではあまり言わない表現だと思います。代わりに初級の「~ています」でよく使う表現というのはどういうものがあると思いますか? よかったら他の受講生さんも一緒に考えてみましょう」
と、改善点を一緒に考えるような感じにしたいです。
そもそも、準備段階、もしくは教案作成の段階でチェックして指摘するかな。私のいる養成講座では、教案作成の時間もちゃんと取ってあるので、その時間を使ってチェックしています。
授業の組み立てについては準備段階で相談してくる方も多いのですが、総じてしっかり組み立てができてる受講生の方が多い印象です。
なので、模擬授業をしてもらっても進め方でそれほど不安を持ったことはありません。
私が受講生さんの模擬授業で気になるのは、
①教師ばかりが喋ってしまう
②難しい表現をよく使う
③「お」を付けてしまう(初級のみ)
の3つです。ちょっと説明します。
①教師ばかりが喋ってしまう
これは3パタン考えられまして、1つめは「緊張すると饒舌になってしまう」というパタンです。2つめは「無言になってしまう(音がない時間が生まれる)のが不安で、何か喋ってしまう」というパタンで、3つめは「喋るのが好き」という性格によるものです。
これについては、できるだけ教師が喋らず、学習者に喋ってもらうようにお願いするしかありません。「5W1H」の質問をするだけでも学習者に喋ってもらうチャンスが生まれるので、実践してもらうようにお願いしています。
②難しい表現をよく使う
初級の授業なのに、「~っていうふうに言っていただけないでしょうか」というような難しい表現で指示を出してしまう方が多くいらっしゃいます。「言ってもらってもいいでしょうか」だったら初級でも通じそうですが、初級の前半ではまだ難しいんじゃないかと思います。単純に「はい」って言いながら学習者の顔を見て手のひらを差し出すだけでも、十分伝わると思います。それでだめなら「言ってください」でいいんじゃないかと…。
③「お」を付けてしまう
これは受講生さんが結構な確率で無意識に言ってしまっているものです。例えば「お休み(の日)」「お友達」「お料理」とか。これ自体は別に問題はないのですが、初級の学習者に対して使いすぎると、初級の学習者がポカンとしてしまうから、という考えからです。
ちなみに「お医者さん」のように「職業+さん」も初級の段階では難しいのではないかと思います。
以上です。
あ、あと、学習者役をしてくれている外国人の方からコメントをよくもらうのが、
スライドで授業をする場合、五十音図などの表は別の移置に紙で貼っておいてくれるとありがたい。
というものです。例えば可能形を勉強するとき、スライドで作り方を説明してくれても、口頭練習をするときになって「イ段をエ段に変える」ということがすぐにできない場合や、エ段の音が思い出せない場合もあるので、それを思い出せるように、ホワイトボードのどこかに貼っておいてくれるとうれしいというものでした。
養成講座で勉強中の皆様、がんばってください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。