くまーるブログ

あやしうこそものぐるほしけれ。

日本語教師の求人の「待遇」の表記について

 

外国人の新規入国の緩和が進み、日本語学校などの教育機関の求人が増えてきました。
私も、養成講座の受講生さんのために求人をチェックしているのですが、
相変わらずだなぁ」と思うことがあります。

それは、待遇の部分です。
待遇に関する表記が、ほんとに曖昧なのです。

 

日本語学校の非常勤講師の求人を中心に、いくつかの例を見てみましょう。
(※一部加工してあります)

 

<A校>
1コマ(45分)1,600円以上(能力・経験を考慮して決定します)

<B校>
1コマ(45分)1,600円以上(経験及び能力により相談。クラス人数により、手当が加算されます)

 

まず、A校とB校からわかるように、「コマ給」での表示が多いです。
日本語学校の多くは1コマ45分です。その45分の授業時間に対して給料が発生するという考え方です。

そして日本語学校では4コマを通しで教えることを基本としているところが多いです。
A校とB校にはそれが書かれていません。
もちろん、「2コマだけがいいです」というお願いもできますが、基本的には4コマ通して働く人を優先します。

 

<C校>
7,600円/半日

 

その点では、上記のC校のように「半日」と書かれているのは潔いかと思います。
でも今度はこれでは1コマが何分なのかがわかりません。

もうちょっと詳しく書かれているところだと、こんな感じです。

 

<D校>
経歴、経験等を考慮して決定しますが、45分×4コマ、8,000円以上は保証。これには試験採点やクラス内の簡単な学生相談対応などの付随業務も含まれます。

 

「45分×4コマ、8,000円以上は保証」というのは心強いですね。これは言い換えれば「1コマ(45分)2,000円以上(4コマで教えることを基本とします)」っていう感じですね。

ちなみに、「経験・経歴・能力に応じて決める」というのは、その学校ごとに「給料のランク表」みたいなのがあって、それに基づいて決めています。おおむね100円刻みでランクが決められ、未経験の人は一番下、1年以内勤務したことがある人は下から2番目、みたいな感じです。これは、その学校内で働き続けた場合の昇給の基準にもなっていると思います。未経験だと一番下だけど、1年勤務するとランクが1つ上がる、みたいに。

ちなみのちなみなのですが、ランクの最高は2,500円ぐらいかなぁ、と思います。
(根拠なし)

困るのは、これがどういう基準になっているのかが応募者には何もわからないことです。

そして、D校から新たなことがつかめます。付随業務の存在です。


「これには試験採点やクラス内の簡単な学生相談対応などの付随業務も含まれます」

 

の部分です。


つまり、日本語教師の非常勤のお仕事には、試験の採点(おそらく、小テストみたいなものも含まれる)やクラス内の簡単な学生相談(日本人の知り合いのメールで意味が分からないものがあるので教えてほしい、とか)の対応が含まれる、ということです。

A校~C校には、それが書かれていません。
なぜ事前に書いてくれないのでしょうか。

 

 

 

さて、なにゆえ「コマ給」なんでしょうね?
それについての疑問点を述べるのは後にするとして、コマ給以外の表記はないか、探してみました。

 

<E校>
コマ時給1,700円以上

 

コマ時給!



これは初めて見ました。

1コマ60分ということでしょうか。

「1コマ(45分)1,600円」のところだと、時給に直すと2,133円になるので、時給1,700円ではだいぶ安いな、ということになります。

コマじろう、もとい、「コマ時給」の意味を説明してほしいものですね。

 

<F校>
1時間2,000円以上(経験を考慮の上決定・交通費他手当あり)

 

そしてF校。
時給です! わかりやすいです。


でも、勤務時間とかが書かれていません。基本となる勤務時間(例えば8時半~12時半)みたいな感じで書いてくれるとうれしいのですが…。

ということで、ここまで求人票の待遇面での曖昧さについて見てきました。

 

どうしてこんなに曖昧なんだろう・・・


そういう気持ちから、「実態としてどうなのか。これでいいのか」ということを知りたくて、昔、社労士の方をお招きして勉強会をしたことがあります。

そのときに社労士の方が参考になるものとして取り上げてくださったのが、「学習塾の講師給」についてでした。

学習塾の講師もコマ給が多く、授業時間内にしか給料が支払われないということが多いようです。
しかしコマ給では、授業時間外の労働(前準備、後片付け、生徒からの質問・相談)については支払いがなく、労働基準法(正確には最低賃金法とのこと)に違反しているのだそうです。

 

勉強会では、2018年の4月に神奈川労働局が出したお知らせ(行政情報)の「学習塾における講師等の労働条件の確保・改善のポイント」を紹介してくださいました。(以下「労働条件のポイント」と呼びます)

 

学習塾における講師等の労働条件の確保・改善のポイント[神奈川労働局]

https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/var/rev0/0120/1443/20182221457.pdf

 

これによると、「従事すべき業務を具体的に明示しましょう」とあります。
「労働条件通知書」に明記するのはもちろんですが、求人の段階でもできるだけ正確に示してほしいものです。

神奈川労働局の「労働条件のポイント」では、コマ給そのものを否定してはいません。
コマ給で示すとともに、「授業時間に対する時間単価を明示しましょう」とあります。
そうです。併記してもらえれば何も問題はないのです。

ただその場合は、付随業務が発生した場合の規定なども記載しておくべきだとも書かれています。

(以下の資料参照。画像は神奈川労働局の「労働条件のポイント」より)


上記画像は労働条件通知書に書くべきものとされていますが、求人の段階で、これに準じるぐらいの情報量を提供してほしいなと思います。

 

例えば、学習塾の求人にこのようなものがありました。

 

1コマ(95分)1,710円
 1コマ:90分授業+5分教室準備など
 日次手当25分400円を別途支給
 日次手当:授業前準備10分、授業後報告等15分 ※コマ勤務時のみ支給

事務給(時給960円)
 事務給:日次手当分(25分)を超過した授業前準備・授業後報告等の業務、授業以外の業務、研修への参加時に事務給支給

 

やっぱり、これぐらいは書いてほしいな、と思うのです。
コマ給の表示ですが、わかりやすいです。

 

そこで、私なりに、「日本語教師の求人(非常勤講師)の場合も、こういう風に待遇を示してくれたらな」というのを掲げてみたいと思います。

 

1時間 1,200円
拘束時間 8:45~12:45、または、13:00~17:00

1コマ45分です、午前・午後ともに4コマあります。
4コマを通して教えていただきます。

拘束時間中に行っていただく業務として、前準備(プリントのコピー、プロジェクター設定)、後片付け(プロジェクター収納)、学生の掃除のチェック、授業報告があります。
※試験・小テストの採点、学生からの質問(進路についてなど)は専任講師が行います。

拘束時間外に「授業準備給」としてさらに4コマあたり2時間加算します。

 

という感じでどうかな、と思っています。
(「授業準備給」の必要性については改めて述べたいと思います)

 

「時給1,200円」とすると少ないように感じますが、4コマ教えると6時間分の給料になるので、1日7,200円になります。「1コマ(45分×4コマ)1,600円」だと1日6,400円になるので、それよりは多くもらえます。

全ての求人がこのように書かれるのが理想だと思いますが、今のところ私たちが対応できるのは、少しでも明確な待遇が示されているところに応募する、ということでしょう。
もしくは、問い合わせのメールか電話で、詳細を聞くことだと思います。

 

応募もしくは問い合わせの時点で細かいことを答えようとしないところは、「怪しい学校」と認定してもいいかと思います。基本的にはどの学校も待遇に関する内部規定は持っているので、それを開示しない理由はないと思うのです。

 

いつになく長い文章になりましたが、これから日本語学校での就職を目指される方が、少しでも不利益を被らないことを願うばかりです。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。