くまーるブログ

あやしうこそものぐるほしけれ。

カ ナ デ キ

凡人社オンライン日本語サロン研修会


文法の理解から読解へつなげよう―『必ずできる!初級「読解」入門』―

 

に参加しました。

 

私自身『2分で読解力ドリル』という本を出していること、そして日本語学校で読解の授業を担当していることから、今回の『必ずできる!初級「読解」入門』の発行はとても興味があるものでした。

 

実際に購入して自分で使い方を考えてみたのですが、どうしても意図がわからないところがあります。
こういう時は著者の方に直接話を聞くのがいいですね。
今回のセミナーの参加で、この本の意図がよ~くわかりました。

 

印象的だったものを、1つ。

 

『必ずできる』の著者の先生方は、社会通念(常識などをはじめとする、私たちが経験上知っているもの、という理解でいいと思います)をもとに文章を理解しイメージすることの大事さも述べていましたが、場合によっては文法知識が大事なときもあると述べたかったようです。具体例を挙げます。

(ちょっと引用してしまいますがお許しを・・・)

 

1.映画が始まる前にトイレに行った。

→トイレに行った人は?

 

2.友達が来る前に掃除をした。

→掃除をした人は?

 

3.友達が来る前に花を買った。

→花を買った人は?

 

上例の1~3では、1は「私」だとわかる(と思う)のですが、2は社会通念でもって「自分の家に友だちを呼ぶ。家が汚い。じゃあ掃除」となり、だから「私」となります。しかし、3は「Aが友人Bの家に呼ばれた。(友人Bのために)花を買って持っていこう」と社会通念でもって考えると「誰が」を間違えてしまう。だから文法の知識(「~前に」の文では「が」を使う)ことが大事だと『必ずできる』の先生方は述べていました。


2つめは、全体を聞いて私が思ったことです。

 

それは

「文章を読んだり、イラストを見たりしたとき、全体の状況・場面をどのイメージできるかということが大事なんじゃないか」

 

ということです。そして付け加えるのなら、

「イメージしたものと、文法や語彙を結び付けられるか」

ということです。

 

例えばこの絵を見た場合、

女の人が男の人にお金を貸してほしい(or男の人からお金を借りたい)ということをまずイメージする必要があるのですが、これをどう表現するかですよね。例えば、以下の①~⑥が現れる可能性があります。

 

①「お金貸してくれませんか」
②「お金を借りたいのですが」

 

③「お金貸してほしいです」
④「お金を借りてもいいですか」

 

⑤「お金貸してもいいですか」
⑥「お金借りてください」

 

⑤⑥がおかしいのは言うまでもないでしょう。
「イメージしたものと、文法や語彙を結び付けられるか」
において、正しい結びつけができていないことがわかります。

 

③④についてはどうでしょう。
こういう結び付けをする学習者もいるかもしれません。
「意味は通じるけどこの場面では使わない」という理解も大事だと思います。

ということで、①②に結び付くように教師が支援するのが読解の授業かな、と個人的には思っています。

 

そのためには今回の『必ずできる!初級「読解」入門』の練習問題を数多く解く必要もありますし、イラストをみて描写する練習(手前味噌ですが『ロジトレ』にもそういう練習があります)を積み重ねる必要があるかな、と思います。

 

文法にしろ語彙にしろ、
「こんなときにこう言う」というのを覚えて増やしていくのが大事かなと思います。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

学習者のことをどう呼ぶか。

皆さんは、学習者のことをどう呼んでいますか?

仮に、ということで、グエン・ヴァン・マイ(Nguyen Van Mai)さんというベトナム人の男子留学生に登場してもらいましょう。

 

 

私は、2番目の「マイさん」です。
ご存知の方も多いと思いますが、ベトナム人の場合、名前のうち、最後のパートを呼称として用いることが多いからです。

ちなみにもう一人「マイさん」がいる場合、「ヴァン・マイさん」ともう一つのパートもつけることが多いです。

 

でも今回はこういうことを話題にしたいのではなくて・・・。

職員室等、学習者がいないところで学習者の話をするときに、学習者のことをどう呼んでいるか」ということなんです。

 

ときどきTwitterでも話題になるのが、学習者のことを「あの子」と呼ぶことです。
場合によっては「あいつ」と呼ぶこともあるのでしょうか?

私も「あの子」ということに抵抗はありますが、それ以上に気になるのが

呼び捨て

です。

マイの件ですけど、オープンキャンパスに申し込んだか確認しましたか?」とか
「最近、マイは頑張っていますね」とか。

場合によっては、

マイは最近寝てばかりですね。注意しないと」

みたいなことも。

学生と面と向かって話をするときに呼び捨てにする先生はいないと思いますが、
職員室で学生のことを話すときになると・・・どうしてなんでしょうかね?

 

Twitterでもほとんど話題になることがないので、学習者のことを三人称で呼び捨てにするのは抵抗がない方がほとんどなのでしょうか?

 

ちなみに私は行きすぎているのか、授業報告書の類でも呼び捨てに抵抗があるので、授業の様子を書くときも「マイさんは今日は眠そうだった」と「さん付け」にしています。

もし私が日本語学校を運営することになったら、教職員の方には三人称であっても「さん付け」をお願いしたいです。

 

さて、学習者のことを「あの子」と呼ぶことも含め、「どうしてこういうことが起きるのだろう?」と考えてみました。
何の根拠もない、ただの一つの意見にすぎませんが、書いてみようと思います。

 

人間って社会的な生き物なので、いろいろなものに序列を作りますね。
(他の動物にも序列は発生しますが、人間はその比じゃないと思います)

序列というか、立場の上下が発生します。
上下というと語弊があるかもしれませんね。
「管理する方とされる方」と言えばいいでしょうか?

でも、「管理する方とされる方」と言ったところで、何だかんだで上下の意識が働いてしまうのかなと思います。

そのような中で、時々怖い状況に出くわします。

 

以前見たのは、ある若い先生が職員室脇の談話室(ガラス越しに中が見える)で学生と話をしていたのですが、
腕組んで足組んで、ふんぞり返りながら座って学生と話をしていたのです。
話している内容までは聞こえてこないのですが、学生が委縮しているとことから見て絶対に雑談とかではないんですよ。

ニシクマ情報では専任になって半年も経っていないはずなのですが、どこからああいう風格が生まれてくるのかビックリしました。

 

あれなんすかね。

自分のことを上に思っているのかな?

さっき、「何だかんだで上下の意識が働いてしまう」と述べましたが、だんだんこの仕事をしていくうちに、自分のことを上に思ってしまっているのかな?

な~んか、よくわからないけどそういう気がするんです。

なんていうか、高圧的というか上から目線的な人が一定数いる気がするんです。
本人はそのつもりはないのでしょうが、学生にそういう圧をかけてくる先生はいるな~と思います。

もしかしたら、そういう気持ちの一部が「あの子」という呼び方に現れたりするのかな、と思いました。

 

同じく最近、「(教師が)試験に合格させる」という表現についてのツイートも見かけましたが、これも教師の意識(というか無意識?)の中に眠っている要素の一つなのかもしれません。

私の場合、試験については「合格へ近づける」とか「合格への通り道を作る」とかは言うときもありますが、よく言うのは「合格へサポートする」とか「二人三脚でがんばる」とかでしょうかね・・・。

 

なんかまとまりのない文になってきました。
この辺で止めておこうと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

夏至のおやつ


今日は夏至です。

北半球では、1年で一番昼の日が長い日です。

江戸時代に採用されていた「不定時法」の世界では、この日の1日はめちゃめちゃ長かったのです。

簡単に説明すると、添付した図の通りです。

図は、ウェザーニュースさんから頂戴しました・・・💦

 

「明け六つ」と「暮れ六つ」の間を6等分し、6分の1を「一刻」としていました。

ウェザーニュースの図を見てわかるように、夏至冬至では昼の時間がこれだけも違うのです・・・。
昔の人は「明け六つ」の時間に起き、支度して仕事に出かけ「暮れ六つ」の時間の少し前に変える支度をして家に帰ったそうです。店の閉店時間もだいたい「暮れ六つ」あたりだったとか。

昔の庶民は時計を持っていなかったので、「一刻」を知る方法としてお寺などの鐘の音を聞いていました。
一説によると、九は陰陽道で最大の陽の数(縁起の良い数字)とのことだったので、正午の時間に鐘を9回叩き、次の刻には2倍の18回鳴らしたそうです。次は27回、その次は36回と倍数にしていったそうなのですが、それでは叩く回数が多すぎて大変とのことで、一の位の数だけ鳴らしていたそうです。いつしかそれが時刻の呼び名にもなり正午の次を「八つ」その次を「七つ」と呼ばれるようになりました。お昼過ぎの時間に食べる「おやつ」はこの「八つ」から来ています。

ちなみに、江戸時代における「一刻」の長さは毎日変化していたわけではなく、二十四節気ごとに一刻の長さが変わっていたそうです。夏至二十四節気の一つですが、次の小暑(2022年は7月7日)になると、一刻の長さ、つまりは昼間の長さが変わったそうです。

その呼び名以外に時刻を呼ぶときに使われていたのが干支です。午前0時を「子」、午後0時を「午」として「子の刻」「午の刻」などと呼んでいました。「丑三つ時」の「丑」もそれにあたります。ただ、この場合の「三つ」は先ほどの陰陽道とは無関係で、「子から丑」の時間、「丑から寅」の時間などのそれぞれの時間を4等分したものの3番目を意味します。つまり「丑三つ時」というのは「丑から寅の時間を4等分したうちの3番目の時間」という意味です。不定時法の世界でも真夜中であることには変わりないですね。
また、「正午」や「午前」「午後」と呼ぶのも「午後0時」を「午」の時間としていたことによります。

ちなみにですが、干支は方角にも使われ、「子」は北、「午」は南を表していました。地球の北極と南極を結ぶ線を「子午線」と呼ぶのもこれに由来します。

ということで自分が知りたかったことをまとめる形でのブログでした💦
「おやつ」の語源等が参考になれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

初級学習者向けの読解力トレーニングについて

 
非常勤講師としてあちこちの日本語学校でお世話になっています。

言い換えれば、流しの日本語教師っていう感じでしょうか。

日本語学校から依頼を受け、それに応じた授業をさせてもらっています。

 

この春とある日本語学校から依頼を受けたのは、「初級クラスの読解」でした。

拙著の『2分で読解力ドリル』を受けて、「初級から読解力をつける授業をしてほしい」という内容でした。

コロナの関係で入国が遅くなっていることもあり、4月からではなく5月後半からのスタートとなりました。

ということで1ヶ月ほど猶予をもらっていたのですが、その間ずっと「何をやるといいのかな~」と思っていました。

 

読解力が付いたかどうかを知るための基準としてJLPTのN4(の合格)があると思ったので、本屋さんに行ってN4の本を買い足したりしました。もちろん既に持っているものも改めて読み返してみました。

でもどの本も、いきなり文章を読ませるということから始めるのです。

 

私はな~んか違うと思いました。

 

決して、「初級の学習者に文章を読む力はまだない。いきなり文章を読ませるなんて時期尚早だ」と言いたいのではありません。

何て言うか、こう、準備運動みたいなものがほしいなあ、と思うのです。

私の印象では、日本語教育の読解というのは、中級あたりから本格的な読解が始まる気がしています。
初級のうちにまとまった文章を読んでこないまま、中級になって本格的な読解に触れて、あたふたする学習者もいると思っています。

そこで初級から読解をと思うのですが、JLPTの問題集や対策本以外に、読解の練習ができる本が少ない気がしています。

でも、いきなり文章を読ませることには、個人的には抵抗があります。
(「やっぱり『いきなり文章を読ませるなんて時期尚早だ』って言いたいんじゃないの」と言われちゃいそうですが…💦)

 

繰り返しになりますが、準備運動みたいなものがほしいのです。

 

それにあたるものをずっと、ずっと考えていました。

GWの間もずっと考えていて、ようやく出てきたのが以下の3つでした。

 

①語彙力

②注意深く読む力(集中力)

③言い換える力(同じ意味の文であることを理解する力)


①については細かい説明は不要だと思います。
ただ、初級のうちから「自分で新しい言葉をどんどん覚えていく」ということをする習慣を付けておくといいかなと思っています。
例えばノートやスマホに、「気になった言葉」「新しく知った言葉」を書き留めて(入力して)おく癖をつける、といったことでしょうか。できれば意味も一緒に覚えていったほうがいいかなと思います。
教科書に出てこない言葉でも、どんどん吸収していってほしいなと思います。

 

②については、学習者自身が出身国において母語でどれだけ読解をやってきたかによると思います。もしかしたら母語でもまとまった量の文章を読むということをしてこなかった学習者もいるかもしれません。また、「読む」の中にはただ字面を追っていけばいいのではなくて、しっかりと注視して内容をつかんでいく必要なものもあります。語学における読解問題は後者に当たる気がします。それを考えると「注意深く読む力」が必要なのではないかと思いました。ある意味「集中力」ですね。集中して読む力を身につけねば、と思います。

例えば、ということでこんな感じの練習を考えてみました。恐る恐るツイートをしてみましたが、日本語教師の方には理解してもらえそうかな。

 

 

 

③については、JLPTの読解の問題に「同じ意味の文であることを理解する力」がないと解けないものが多いことに気づきました。

以下をご覧ください。

 

次の文章を読んで、質問に答えてください。答えは1~4から一番いいものを一つ選んでください。

 

 アイスクリームは夏に食べるととてもおいしいですが、私は寒い冬でも時々食べます。夏は毎日食べるので安いものしか買いませんが、冬は高いものを買います。暖かい部屋でいいアイスクリームを食べるのが私の楽しみなのです。

 

問 私の楽しみは何ですか。

1 冬に暖かい部屋で毎日アイスクリームを食べること
2 冬に暖かい部屋で高いアイスクリームを食べること
3 夏に毎日アイスクリームを食べること
4 夏に高いアイスクリームを食べること

 

答 2

出典『日本語能力試験公式問題集 第二集 N4』(2018)
(一部、ひらがなを漢字に改めました)

 
正解である「2 冬に暖かい部屋で高いアイスクリームを食べること」の部分に至るには、本文の「冬は高いものを買います。暖かい部屋でいいアイスクリームを食べるのが私の楽しみ」に着目する必要があります。そしてここでの「高いもの」と「いいアイスクリーム」が同じであることに気づかなければなりません。こういった感じの出題が多いなと、私個人は感じています。

 

そこで、上記の①~③の力をつけるトレーニングを「準備運動」として行うのがよいのかな、と思い、練習問題をせっせと作り始めました。

5月の後半に開始するので、リミットはあと1週間ばかり。

 

がんばって練習問題を作ります!

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

理由の表現

このような話を聞きました。

とある授業で、学習者に好きなものを聞く、という機会があったそうです。

1人の学習者が、映画『君の名は』が好きだ、と言ったそうです。

名鉄名和駅駅名標(本文とは関係ありません)
Wikipediaのものを使用

 

理由を聞いてみたところ、その答えが

 

日本語がわからないから日本のアニメが好きです。

 

というものでした。

それを聞いて「はて、どういう意味だろう? もしかして『最初は日本語がわからなくて、日本語の勉強のために日本の映像作品を見るようになってアニメが好きになった』っていう意味かな?」と想像してみました。

私はこの話を聞いただけなので、この授業でこのように発言した学習者に意図を確認することはできないのですが、「どうしてこういう言い方になってしまったんだろう?」と思ったものでした。

 

さて次は、これは私の授業でのこと。

Google Formsを使って作文をしてもらったのですが、このときは理由を聞く作文をしました。例えば、

 

昨日、新しいくつを買いました。なぜなら、_______。

 

の___の部分を考えてもらうものです。

答えとしては、

 

昨日、私が普段はいているくつが壊れたからです。

 

というようなものが挙がった一方、

 

この靴はきれいだし、それに値段も高いからです。

 

という、「う~む」と首をかしげるものもありました。

 

今、おなかがすいています。なぜなら、_______。

 

においては、

 

朝から何も食べなかったからです。

 

というようなものが挙がった一方、

 

いいレストランに行きたいです。

 

という答えも。

 

今日からダイエットをするつもりでしたが、やめました。なぜなら、_______。

 

においては、

 

ケーキを食べましょう。

 

という答えも。

 

こういう答えが1~2割ぐらいの割合で発生します。

論理というか、話の流れ(順番)の理解は大丈夫なのかな? と心配になりました。

単純に、「前半部分⇒後半部分」という流れで考えているのでしょうか・・・?

無記名のFormsでやってしまったため、本人を割り出して聞くのは失礼に感じて、本人には意図を聞きませんでした・・・。


その代わり、この作文のフィードバックにおいて、「なぜなら、_______。」が順番としては先で、その前にある部分が後の出来事・行動であると伝えました。それによってほぼ改善されました。

そういうことから、単に前後関係がわかっていなかっただけなのかもしれません。ただ、こういった話の前後関係とか順番といあったものは物事の理解にも大切なことです。読解において誤解をしてしまう可能性もあります。

 

作文にしても、読解にしても、「話の流れ、論理」というものは大事なものなので、なんとかつまづかないでほしいな、と思いますが、つまづかないようにする訓練というか練習が必要なのかもしれませんね。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

日本語教師の求人の「待遇」の表記について

 

外国人の新規入国の緩和が進み、日本語学校などの教育機関の求人が増えてきました。
私も、養成講座の受講生さんのために求人をチェックしているのですが、
相変わらずだなぁ」と思うことがあります。

それは、待遇の部分です。
待遇に関する表記が、ほんとに曖昧なのです。

 

日本語学校の非常勤講師の求人を中心に、いくつかの例を見てみましょう。
(※一部加工してあります)

 

<A校>
1コマ(45分)1,600円以上(能力・経験を考慮して決定します)

<B校>
1コマ(45分)1,600円以上(経験及び能力により相談。クラス人数により、手当が加算されます)

 

まず、A校とB校からわかるように、「コマ給」での表示が多いです。
日本語学校の多くは1コマ45分です。その45分の授業時間に対して給料が発生するという考え方です。

そして日本語学校では4コマを通しで教えることを基本としているところが多いです。
A校とB校にはそれが書かれていません。
もちろん、「2コマだけがいいです」というお願いもできますが、基本的には4コマ通して働く人を優先します。

 

<C校>
7,600円/半日

 

その点では、上記のC校のように「半日」と書かれているのは潔いかと思います。
でも今度はこれでは1コマが何分なのかがわかりません。

もうちょっと詳しく書かれているところだと、こんな感じです。

 

<D校>
経歴、経験等を考慮して決定しますが、45分×4コマ、8,000円以上は保証。これには試験採点やクラス内の簡単な学生相談対応などの付随業務も含まれます。

 

「45分×4コマ、8,000円以上は保証」というのは心強いですね。これは言い換えれば「1コマ(45分)2,000円以上(4コマで教えることを基本とします)」っていう感じですね。

ちなみに、「経験・経歴・能力に応じて決める」というのは、その学校ごとに「給料のランク表」みたいなのがあって、それに基づいて決めています。おおむね100円刻みでランクが決められ、未経験の人は一番下、1年以内勤務したことがある人は下から2番目、みたいな感じです。これは、その学校内で働き続けた場合の昇給の基準にもなっていると思います。未経験だと一番下だけど、1年勤務するとランクが1つ上がる、みたいに。

ちなみのちなみなのですが、ランクの最高は2,500円ぐらいかなぁ、と思います。
(根拠なし)

困るのは、これがどういう基準になっているのかが応募者には何もわからないことです。

そして、D校から新たなことがつかめます。付随業務の存在です。


「これには試験採点やクラス内の簡単な学生相談対応などの付随業務も含まれます」

 

の部分です。


つまり、日本語教師の非常勤のお仕事には、試験の採点(おそらく、小テストみたいなものも含まれる)やクラス内の簡単な学生相談(日本人の知り合いのメールで意味が分からないものがあるので教えてほしい、とか)の対応が含まれる、ということです。

A校~C校には、それが書かれていません。
なぜ事前に書いてくれないのでしょうか。

 

 

 

さて、なにゆえ「コマ給」なんでしょうね?
それについての疑問点を述べるのは後にするとして、コマ給以外の表記はないか、探してみました。

 

<E校>
コマ時給1,700円以上

 

コマ時給!



これは初めて見ました。

1コマ60分ということでしょうか。

「1コマ(45分)1,600円」のところだと、時給に直すと2,133円になるので、時給1,700円ではだいぶ安いな、ということになります。

コマじろう、もとい、「コマ時給」の意味を説明してほしいものですね。

 

<F校>
1時間2,000円以上(経験を考慮の上決定・交通費他手当あり)

 

そしてF校。
時給です! わかりやすいです。


でも、勤務時間とかが書かれていません。基本となる勤務時間(例えば8時半~12時半)みたいな感じで書いてくれるとうれしいのですが…。

ということで、ここまで求人票の待遇面での曖昧さについて見てきました。

 

どうしてこんなに曖昧なんだろう・・・


そういう気持ちから、「実態としてどうなのか。これでいいのか」ということを知りたくて、昔、社労士の方をお招きして勉強会をしたことがあります。

そのときに社労士の方が参考になるものとして取り上げてくださったのが、「学習塾の講師給」についてでした。

学習塾の講師もコマ給が多く、授業時間内にしか給料が支払われないということが多いようです。
しかしコマ給では、授業時間外の労働(前準備、後片付け、生徒からの質問・相談)については支払いがなく、労働基準法(正確には最低賃金法とのこと)に違反しているのだそうです。

 

勉強会では、2018年の4月に神奈川労働局が出したお知らせ(行政情報)の「学習塾における講師等の労働条件の確保・改善のポイント」を紹介してくださいました。(以下「労働条件のポイント」と呼びます)

 

学習塾における講師等の労働条件の確保・改善のポイント[神奈川労働局]

https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/var/rev0/0120/1443/20182221457.pdf

 

これによると、「従事すべき業務を具体的に明示しましょう」とあります。
「労働条件通知書」に明記するのはもちろんですが、求人の段階でもできるだけ正確に示してほしいものです。

神奈川労働局の「労働条件のポイント」では、コマ給そのものを否定してはいません。
コマ給で示すとともに、「授業時間に対する時間単価を明示しましょう」とあります。
そうです。併記してもらえれば何も問題はないのです。

ただその場合は、付随業務が発生した場合の規定なども記載しておくべきだとも書かれています。

(以下の資料参照。画像は神奈川労働局の「労働条件のポイント」より)


上記画像は労働条件通知書に書くべきものとされていますが、求人の段階で、これに準じるぐらいの情報量を提供してほしいなと思います。

 

例えば、学習塾の求人にこのようなものがありました。

 

1コマ(95分)1,710円
 1コマ:90分授業+5分教室準備など
 日次手当25分400円を別途支給
 日次手当:授業前準備10分、授業後報告等15分 ※コマ勤務時のみ支給

事務給(時給960円)
 事務給:日次手当分(25分)を超過した授業前準備・授業後報告等の業務、授業以外の業務、研修への参加時に事務給支給

 

やっぱり、これぐらいは書いてほしいな、と思うのです。
コマ給の表示ですが、わかりやすいです。

 

そこで、私なりに、「日本語教師の求人(非常勤講師)の場合も、こういう風に待遇を示してくれたらな」というのを掲げてみたいと思います。

 

1時間 1,200円
拘束時間 8:45~12:45、または、13:00~17:00

1コマ45分です、午前・午後ともに4コマあります。
4コマを通して教えていただきます。

拘束時間中に行っていただく業務として、前準備(プリントのコピー、プロジェクター設定)、後片付け(プロジェクター収納)、学生の掃除のチェック、授業報告があります。
※試験・小テストの採点、学生からの質問(進路についてなど)は専任講師が行います。

拘束時間外に「授業準備給」としてさらに4コマあたり2時間加算します。

 

という感じでどうかな、と思っています。
(「授業準備給」の必要性については改めて述べたいと思います)

 

「時給1,200円」とすると少ないように感じますが、4コマ教えると6時間分の給料になるので、1日7,200円になります。「1コマ(45分×4コマ)1,600円」だと1日6,400円になるので、それよりは多くもらえます。

全ての求人がこのように書かれるのが理想だと思いますが、今のところ私たちが対応できるのは、少しでも明確な待遇が示されているところに応募する、ということでしょう。
もしくは、問い合わせのメールか電話で、詳細を聞くことだと思います。

 

応募もしくは問い合わせの時点で細かいことを答えようとしないところは、「怪しい学校」と認定してもいいかと思います。基本的にはどの学校も待遇に関する内部規定は持っているので、それを開示しない理由はないと思うのです。

 

いつになく長い文章になりましたが、これから日本語学校での就職を目指される方が、少しでも不利益を被らないことを願うばかりです。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

喉がカラカラですから、空のピーナッツの殻に水を入れてから飲みます。〔その②〕

f:id:nkuma2490:20220412132049p:plainちょうど1年前に、このようなことを書きました。

https://nkuma2490.hatenablog.com/entry/2021/04/12/091002


ロジトレには理由を述べる練習をするところがあり、

今、とてもおなかがすいています。
なぜなら、__________________からです。

 

という部分の「~からです」の部分をこちらが思うように書いてくれない、という話でした。

“「ですから」「ますから」の威力(呪縛?)が強すぎる~!”という思いなのですが、
その理由は初級教科書にそのように載っているからではないか、という仮の結論を出しました。

 

たとえば、「『みんなの日本語』9課 練習B 8」に

 

 どうして、京都へ行きませんか。…約束がありますから。

 

のように載っているのです。

“「~からです」は初級の教科書では全く扱っていないのか、気になる”というような形で1年前のブログは締めくくっているのですが、これについて naotaro(直太朗)さんが解き明かしてくださっていました。

 

(リンクの貼り付けにつきましては、御本人より許可をいただきました)

 

naotaroさんによりますと、
みんなの日本語』44課において「普通形+からです。」が出現しているそうです。
さらに48課には「普通形+からだ。」もあるとのこと。

 

「~からです」を自分でも調べてみました。

p.161「問題」の「読み物」のところですね。

 

 難しい言葉は覚えにくいし、まちがえやすいからです。

 

うわ、ほんとだ。

どうしても松本さんの着物姿に目が行ってしまいがちですが、きちんと確認できますね。

「~からだ」のほうも見てみましょう。

 

 体が丈夫になるからだ。

 

ありました、ありました。

同じく、p.195「問題」の「読み物」のところですね。

 

いや~。

しれっと現れてる。

 

『翻訳・文法解説』や『教え方の手引き』も見てみたのですが、「~からです(~からだ)」についての言及はありませんでした。

 

う~む・・・🤔
(考え中)

 

敢えて共通点を指摘するとすれば、「読み物」であることでしょうか。
もしかしたら、『みんなの日本語』では、「書き言葉」においては「~からです(~からだ)」が現れることがあるよ、ってことを暗に述べたいのでしょうか・・・?

真相のほどはわからないのですが、ある意味「気づかないカリキュラム」的なものを感じます。

 

これから『みんなの日本語』ユーザーの学習者がロジトレを行うときは、今後は44課・48課への言及が必要ですね。

 

さて、私が今関わっている日本語学校では『できる日本語』を使っています。

そこで『できる日本語』ではどうなのか確認してみました。まずは「から」の初登場から。
(これについては去年のブログでも書きました)

 

初級5課
本冊p.92[ST-2]

A:Bさん、パソコンを買いましたか。
B:いいえ、買いませんでした。
A:どうしてかいませんでしたか。
B:高かったですから(、買いませんでした)。

 

「~ですから」が登場です。

念のために、別冊と文法ノートも調べてみました。

 

初級5課
別冊p.19
忙しかったですから、朝ごはんを食べませんでした。
昨日は夜10時まで仕事でしたから、晩ごはんを作りませんでした。

 

初級5課
文法ノートp.30

今朝、10時に起きましたから、朝ごはんを食べませんでした。
明日、テストですから、今晩、家で勉強します。

 

「(動詞)ましたから」と「名詞+ですから」も登場しています。

その後の課ではどう表れているのでしょうか。追ってみましょう。


初級9課
本冊p.160[ST-2]

私は上手に漢字を書くことができませんから、書道を習いたいです。

 

初中級6課
別冊p.52
もうかばんに入れてありますから、大丈夫です。

 

丁寧形に「から」が付いているなぁ・・・。

そして、「~からです」が現れます。初中級の14課です。

 

初中級14課
本冊p.196[ST-3]

ハンカチは涙を連想するものだからだよ。

 

初中級14課
別冊p.55

財布の中にお金が入っているとお金が増えると言われているからです。

 

初中級14課
文法ノートp.131
お風呂に入った後で、体が冷えやすくなるからです。

 

「~からだ」も同時に出現します。

「おお、でき日すごい!、~からです(~からだ)』を扱ってるじゃん!」と狂喜乱舞するのですが、

 

14課というのがね…💦

あと1課で初中級終わってしまうんです。
この後は中級です。

 

「遅すぎないかなぁ」という気がします。

 

今年の初めぐらいに、『できる日本語』の中級を勉強中の学習者に「~からです」を使って理由を述べてもらう練習をしたのですが、やはりうまく言えないんです。「歩きますからです」とか「便利ですからです」みたいな感じで表現する学習者が一定数いて、驚きました。

 

「遅すぎるのでは」と思うのはみん日も同じことです。

 

私の推察では、普通形を習った後に「普通形+から」を扱わないで、ずっと「丁寧形+から」のままで表されていることが、学習者の化石化を引き起こしているのではないかと思うのです。

 

教師としても「~ますから」「~ですから」を知らず知らずのうちに多用してしまい、学習者にインプットを与えてしまっているのかもしれません。断定してはいけませんが、教科書でこういう風に扱われていると、それがインプットとして入ってきた学習者は「~ですから」「~ますから」をアウトプットしやすくなるな、と思いました。

 

とにもかくにも。

ロジトレで理由の表現をやるときに、「~ますから」「~ですから」という表現が発生し、私はいつもあたふたしてしまいます…💦

 

最後に、私からの呼びかけです。

 

「から」と「普通形」の両方を学習したら、

「普通形+から」をやりましょう。

そして、「~からです」もやりましょう。

 

よろしくお願いいたします🙇